株式と債券の比率は年齢で決める?配分ごとの下落と失敗率
株式の割合は「100−年齢」がよいのか。株100%から20%までの5通りで、下落の深さ、最初の金額を下回る割合、取り崩しで資金が尽きる割合を1,000通りの未来で比べ、年齢より何を見るべきかを説明します。
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株式の割合は「100−年齢」がよいのか。株100%から20%までの5通りで、下落の深さ、最初の金額を下回る割合、取り崩しで資金が尽きる割合を1,000通りの未来で比べ、年齢より何を見るべきかを説明します。
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株式の割合を「100から年齢を引いた数」にする、という目安がよく紹介されます。30歳なら株70%、65歳なら株35%で、年をとるほど債券を増やす考え方です。これがどこまで当てはまるのかを確かめるため、株と債券の比率を株100%から20%まで5通りに変えて、1,000通りの未来で比べました。
債券を増やすほど途中の下落は浅くなり、増え方は小さくなります。そのうえで結果を分けたのは、年齢そのものではなく、お金を使うまでの年数と、取り崩しながら使うかどうかでした。5年後に使うお金なら、債券を増やすと最初の金額を下回って終わる割合が減りました(株100%で8.0%、株20%で3.8%)。一方、最初の資産の4%をインフレに合わせて増やしながら30年取り崩す場合は、株を60%より減らすと資金が尽きやすくなりました(株60%で5.9%、株20%で20.3%)。65歳で目安どおり株35%にして30年取り崩すと、資金が尽きやすい側に入ります。年齢は「使うまでの年数」の目安にはなりますが、取り崩す期間や、どこまでの下落なら売らずに持ち続けられるかは見ていません。
比較の条件は次のとおりです。
月ごとのリターンは、値動きが穏やかな平常局面と、株価が大きく揺れて下がりやすい荒れ局面を行き来するモデルから引いています。モデルは過去データ全体に当てはめたもので、仕組みは「積立のモンテカルロシミュレーションとは」で説明しています。
20年間のうちに、資産がそれまでの最高値からどこまで下がったか(最大ドローダウン)と、最高値をつけてから同じ値に戻るまでに最も長くかかった月数を比べます。20年の終わりまでに戻らなかった場合は、終わりまでの月数を数えています。
| 株式の割合 | 最大ドローダウン(中央値) | 最大ドローダウン(下位10%) | 最長の回復期間(中央値) | 最長の回復期間(長いほうから10%) |
|---|---|---|---|---|
| 100% | -29% | -45% | 43か月 | 90か月 |
| 80% | -24% | -38% | 40か月 | 85か月 |
| 60% | -19% | -30% | 37か月 | 81か月 |
| 40% | -14% | -22% | 34か月 | 76か月 |
| 20% | -10% | -16% | 34か月 | 75か月 |
最大ドローダウンの中央値(1,000本の真ん中の結果)は、株100%の-29%から株20%の-10%まで、債券を増やすほど浅くなりました。下位10%(悪いほうから10本に1本の水準)でも同じ傾向です。暴落時に債券がなぜ持ちこたえやすいのか、債券も一緒に下がった2022年のような例外は、「暴落時に分散投資は効くのか」で扱っています。
一方、回復にかかった期間の差は、深さの差ほど大きくありません。中央値は株100%で43か月、株20%でも34か月でした。債券の多い配分は浅く下がりますが、その後の増え方もゆっくりなので、元の高値に戻るまでにはやはり時間がかかります。
同じ実験で、最初の金額を下回って終わったパスの割合を、持っていた年数ごとに比べます。
| 株式の割合 | 5年 | 10年 | 20年 |
|---|---|---|---|
| 100% | 8.0% | 3.3% | 1.5% |
| 80% | 6.5% | 2.4% | 1.2% |
| 60% | 5.1% | 1.7% | 0.8% |
| 40% | 3.9% | 1.2% | 0.5% |
| 20% | 3.8% | 1.7% | 0.2% |
5年では、株100%の8.0%に対し、株20%は3.8%でした。期間が短いと、株の多い配分は大きく下がったあと、戻りきる前に期間が終わることがあります。20年では、どの配分でも下回って終わる割合は小さくなりました。下がっても戻るまでの時間があるためです。
ただし、債券が減らしたのは最初の金額を割り込む確率で、悪いほうの結果の水準ではありません。5年後の下位10%は、どの配分でも最初の金額の1.1倍前後でした。一方で中央値は、株100%の1.7倍に対して株20%は1.3倍と低く、20年後には8.2倍と2.5倍まで開きます。
「年齢とともに債券を増やす」と言われる理由の一つは、5年と20年のこの違いです。年齢が上がると、多くの人はお金を使い始めるまでの年数が短くなり、下落を取り戻す時間が減ります。逆に、使うのが何十年も先のお金なら、どの配分でも最初の金額を下回って終わる割合は小さく、債券を増やして変わるのは主に途中の下落の深さと、上で見た増え方の差です。
株100%で最初の金額を下回って終わる割合(元本割れ)は、過去の歴史より小さく出ています。実際のS&P500(SPY、配当込み)では、1993年以降のどの月から5年間持ったかで見ると、14%の期間で元本割れしていました。10年間でも8%です。ただし、隣り合う期間は重なっていて、10年の元本割れはすべて1998〜2000年に持ち始めた期間でした。数字そのものより、配分どうしの差として読んでください。
次に、引退後に資産を取り崩す場合です。条件は「4%ルールとは」と同じで、1年目に資産の4%を取り崩し、その額を年2%のインフレに合わせて増やしていきます。期間中に資金が尽きたパスの割合を「失敗率」と呼びます(シミュレーターに表示される成功率を100%から引いた値です)。株60%の行は、4%ルールの記事と同じパスの結果です。
| 株式の割合 | 20年の失敗率 | 30年の失敗率 | 40年の失敗率 | 30年後の資産(下位10%) | 30年後の資産(中央値) |
|---|---|---|---|---|---|
| 100% | 2.3% | 5.3% | 8.3% | 52% | 683% |
| 80% | 1.5% | 5.1% | 9.3% | 39% | 412% |
| 60% | 1.0% | 5.9% | 12.5% | 19% | 227% |
| 40% | 0.5% | 8.7% | 20.5% | 4% | 108% |
| 20% | 0.4% | 20.3% | 48.7% | 0% | 37% |
30年後の資産は、今の価値に直して引退時を100%とした値です。
20年の取り崩しでは、債券を増やすと失敗率は少し下がりました(株100%で2.3%、株20%で0.4%)。30年では、株100%から60%まではほぼ同じで、株40%で8.7%、株20%で20.3%と増えます。40年になると差はさらに開きます。
理由は、債券の増え方が取り崩しをまかなうには小さいことです。取り崩す額は、今の価値で毎年、最初の資産の4%です。米国総合債券(AGG)の配当込みリターンは2003年以降で年2.9%で、年2%のインフレを差し引くと残りはわずかです。債券の多い配分ほど、引き出す分に対して増える分が小さく、期間が長くなるほど資金が尽きるパスが増えます。下位10%の30年後の資産でも、株の多い配分のほうが多く残りました。
株の多い配分ほど途中の下落は深くなります(最初の表)。上の失敗率は、引退直後に暴落が来たパスも含めた結果です。暴落の時期が取り崩しの結果を変える仕組みは「順序リスクとは」で説明しています。下落の最中に、取り崩す分のほかは売らずに持ち続けられるかどうかは、この表には表れません。
「100−年齢」の目安は、年齢を「お金を使うまでの年数」の代わりとして使っている、と読めます。ところが、同じ65歳でも、すぐに一部を使う人と、30年かけて少しずつ取り崩す人とでは、上の表で見たとおり配分の効き方が逆になります。株35%は表の株40%と株20%の間にあたり、30年取り崩したときの失敗率は株40%で8.7%、株20%で20.3%でした。年金などほかの収入があるか、下落の途中でも売らずにいられるかも、年齢だけではわかりません。
自分の条件で配分を比べるときに見るのは、次の3つです。